インサイダーゲームの欠陥を考える

ベランダで考える女の子コラム

こんにちは、パンダラヴァーです。
インサイダーゲームはボードゲーム界隈では、欠陥のあるゲームだと言われることもあるようです。今回はインサイダーゲームの欠陥について、ゲーム性の観点から分解して解説していきます

インサイダーゲームの構造的欠陥

インサイダーゲームの欠陥について考えるために、まずは各プレイヤーの勝利敗北条件について考えていきます。

村人陣営(GM含む)の勝利条件
お題が出る かつ 投票でインサイダーを多数決で吊る

村人陣営(GM含む)の敗北条件
お題が制限時間内に答えられず時間切れになる
または
お題が出る かつ 村人の誰かが多数決で吊られる

インサイダーの勝利条件
お題が出る
投票で村人の誰かを多数決で吊る

インサイダーの敗北条件
お題が制限時間内に答えられず時間切れになる
または
お題が出る かつ 自分が多数決で吊られる

とこのようになります。基本的には相手陣営が勝利条件を満たした時、自分は敗北条件を満たしていますが、「お題が制限時間内に答えられず時間切れになる」というルールだけは両陣営がともに敗北という結果になっています。ここが構造的欠陥の底にある部分です。つまりどちらの陣営だったとしても相手側が勝利になって自分が敗北するよりは両陣営敗北、という引き分けを目指す方が合理的になってしまっている、ということです。これによってインサイダーゲームで負けないことを最優先した場合の基本戦略は

村人の場合
自分がインサイダーだと疑われるような質問はしない
答えがわかったとしてもインサイダーが誰かわかるまで言わない(村人全員がこの戦略を取るとインサイダー以外はお題を言わない、となる)
インサイダーが誰かわからないままであれば、時間切れで引き分けも狙う

インサイダーの場合
自分がインサイダーだと疑われるような質問はしない
自分が疑われるような質問をしないと答えにたどり着けないようであれば、時間切れを狙う。

となります。両陣営の行動を見ればわかるように、お題当てパートでお題を見つけることにメリットがありません。お題を見つけて考察パートに進むのは相手側の陣営がお題に近づけ、見つけにいった場合のみですが、両陣営ともにお題を見つける方向に力学が働いていないので、理論上はお題当てパートでお題が出ることはなくなってしまいます。

これがインサイダーゲームが持つ最大の構造的欠陥です。

では何故ゲームが成立しているのか?

上にあげた、一見すると致命的な欠陥を持っているインサイダーゲームですが基本的には考察パートまで進みゲームとして成立しています。それは一体何故でしょうか?
前提条件としてゲームが成立するためにはお題当てパートでお題が出る必要があります。逆に言えば、お題当てパートでお題さえ出ればゲームとして成立している、とも言えそうです。

しかし単純に負けないための行動を理想化した場合、お題が出ないはずなのに何故ゲームが成立するのでしょう。身も蓋もない言い方になってしまいますが、それはお題当てゲームが面白いからです。
みんなお題を見つけるのが楽しい。インサイダーも無難なプレイで完全潜伏をしてお題が出ずに両者引き分けで終わるよりも手く村を正解に誘導してさらに村人を騙し切って勝つ方がずっと楽しいです。「理論上はお題当てパートでお題が出ることはなくなってしまいます。」などとゲームを分析してみた所で一番大事な遊んでいる人たちの感情というものがそこにはありません。何のためにみんなゲームで遊んでいるのか、 負けない戦略で引き分けのゲームをするためではなくエキサイティングな気分を味わいたいからなはずです。生死のかかったデスゲームじゃないんですから。

つまりインサイダーゲームはゲーム性を「敗北を避ける最適行動」によってではなく「隠されたお題を見つけたい」という知的好奇心によって担保しているのです。「インサイダーゲームは最適行動を取るとゲームが成立しなくなる欠陥ゲームだ」と断じることがある意味では正しいのかもしれません。でも、ゲームとして成立するための柱となっているのが人間の「謎があったら解かずにはいられない」という欲求なのだとしたら、知的遊戯としてこれほど健全なゲームはないのではないでしょうか。

インサイダーゲームの欠陥を改善してみよう

欠陥をあげた後に「それは欠陥じゃないよ、良い所なんだよ」で話を終わらせるのもどうかと思うので改善案をいくつか提示してみましょう。

イメージで改善する

一つ目はイメージで改善する方法です。方法と言うより、私はいつもインサイダーゲームに対して「村人はお題当てゲームでは全力でお題を当てにいく」「インサイダーは制限時間内にお題が必ず出るように質問する」という協力関係にあるというイメージを持っていました。なので、お題を出すことを優先せずに相手陣営の嫌がるムーブをする……という発想がありませんでした。

この方法では「お題当てパート」を協力フェイズ、「考察パート」を敵対フェイズと言い換え、別ゲームとして捉えてもらうことで「お題当てパート」では純粋にお題当てゲームに集中しようというイメージをプレイヤーに植え付けて改善します。

ハウスルール(マナー)で改善する

二つ目の方法は単純にゲームを停滞させるような行動をハウスルールで禁止にすることです。
ただし、インサイダーの潜伏についてはなかなか定量的にルール付けできないので下記のルールを加えます。

村人がお題がわかっていて、故意に言わないでいること(インサイダーの炙り出し)の禁止

このルール自体も明確に違反行為を指摘できるようなものではありませんが、少なくとも考察時の材料にすることはできなくなります。「私は答えが思いついていたけど、インサイダーの動きを見たくてしばらく様子を見ていました。制限時間が切れそうで焦って答えを言った感じがしたAさんが怪しいと思います」のような考察意見は自分で明確にルール違反をしていることを宣言してしまっているので言えなくなる、ということです。考察の材料にしなくても答えが出ることを遅延させることはできる、と思うでしょうが今度は「もうここまでの質問から答えは浮かんでいるはずなのにあの場面で答えられなかったBさんは、答えを言って怪しまれたくないインサイダーに見える」と言われた際の反論ができなくなります。
とこのように、村人の炙り出し行為を禁止することで「お題当てパート」では純粋にお題当てを楽しんだ方が良い、という村の空気を作ることはできます。村が純粋にお題当てに集中すればインサイダーが誘導のために動く余地もできるのでゲームがうまく回りはじめるでしょう。ハウスルールと言う形でお題当てに集中できる状況をプレイヤーに示してあげて改善するということです。

システムで改善する

上記二つは最終的にはプレイヤーの節度によってゲームをコントロールすることを想定していましたが最後の方法はゲームシステムによって欠陥を改善できないか、と考えた方法です。
具体的にはゲームを単純に勝ち負けとするのではなくポイント制にします。

お題が出なかった場合に、勝利した時よりも多いマイナスポイントを設定することで正解まで到達することを促します。さらに、お題を当てた人にもボーナスポイントを設定しています。こうすることで村人にはお題を当てたい! という感情を与え、インサイダーもボーナスポイントを阻止するためにお題を答えるというムーブも選択肢として考えることができます。投票でのポイントやお題を当てた際のボーナスポイントが得られないインサイダー側は勝利ポイントを多く設定してあります。

「お題当てパートで時間切れになることを考察パートで負けた場合よりデメリットが多くなるように設定する」という基本フォーマットでシステムを作成しましたが、このシステム最大の欠点は「ゲームを、メンバーを変えて複数回遊ぶ」という遊び方をしないと差異が生じないことです。まあ、参考までに作ってみただけなので、インサイダーゲームワールドチャンピオンシップを開く際には土台として役立つかもしれません。
他にもこうするといいよ! というのがあれば教えてください。


まとめ

インサイダーゲームはあくまでもカジュアルなパーティゲームで、戦略的なボードゲームとしては欠陥がある、と言われていることが多いので少し考えてみました。だからより完成度の高いワーワーズというゲームができたりした、と言う意見も一理ありますしね。
ただこの欠陥によって、「お題を当てることに一番貢献した人=一番怪しい」という構図を形作り、「疑う」という負の感情を「褒める」というポジティブな方向に転換できるのはとても面白いゲーム性だと僕は思います。
というところで、今回はここまでです。
それでは、また!

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